様々なチョコレートが、出回っていますが、世界各国の美味しいチョコレートが、簡単に手に入り、

食べられる時代になっています。本当に美味しいチョコレートは、たくさん食べるものではなく、

1、2片程度食べれば十分です。これが、チョコレートはお菓子ではなく嗜好品だという所以です。

良質なカカオ豆を使用していることをはじめとして、素材や製法にこだわって作られている良質なチョコレートは、

たとえ少量であっても、満足感を得ることができます。口に入れると、繊細な味が絶妙なハーモニーを醸し出し、

すっと喉を通っていく快感は、他の食品や食材を食べた時では得難い、幸せな感覚です。

それだけ良質なチョコレートは、デリケートな嗜好品なので、吟味できるように、「五感を使った食べ方」というものがあります。

チョコレートの専門家が風味を確認する「テイスティング」と呼ばれる方法です。繊細な食べ物であることを鑑みた上で、

五感を総動員し、チョコレートの繊細さを引き出して、奥深く味わうということがいちばんの目的です。

1.見てチョコレートを楽しむ

口に入れる前に、チョコレートを見て色と艶を確認します。一般的にカカオマスの含有量が増えると、チョコレートの色は濃くなります。

テンパリング（チョコレートに含まれるカカオバターの結晶を最も安定した状態にし、光沢の美しい滑らかな口当たりのチョコを作るために欠かせない温度調整作業のこと）がしっかり行われているチョコレートの表面は、艶やかで、温度調整が厳密にされている証拠です。

それ以外に、カカオの品種や焙煎の度合い、他の原料のブレンド率によって、色は変わってきますが、テンパリングさしっかり

されていることは、チョコの製造では重要なことで、艶があるかどうかを見ることはチョコレートの質を窺い知る大きな要素です。

2.耳でチョコレートを楽しむ

もし食べるチョコレートが板チョコであれば、口に入れる大きさに割って見てください。割る際に、「パキッ」と綺麗な音を

立てて割れれば、そのチョコレートは、ここアバターの結晶がしっかり詰まっていることであり、言い換えれば、テンパリングが

しっかりとされているということになります。割らなくても良いようなジャンドゥーヤのような一粒が一口サイズのチョコレートは、

割っても音はしませんが、スナップ性がないから悪いというわけではなく、原料がしっかりとマッチして、滋味深くなっている証です。

3.舌に乗せてチョコレートを楽しむ

良いチョコレートを食べる際は、口に含んで飲み込んでしまうのではなく、余韻を楽しむことに贅沢があるので、口に含んだ後、

少し噛み砕いて、舌の上でゆっくり溶かして、滑らかさを感じて見てください。良質なチョコレートは、ざらつきは一切感じずに、

とても口当たりが滑らかなのが特徴です。砂糖の粒子が細かいほど、少し絡みつく濃厚感を感じられます。体温に馴染んだチョコレート

はじんわりと溶けながら口全体に広がっていきます。

4.香りを感じてチョコレートを楽しむ

私たちが食べる時に風味をして感じているほとんどは、香りによるものだと言われますが、チョコレートには、数百から1000の香りが

含まれていると言われています。ですので、ワインやオリーブオイルのように、香りを表す表現がチョコレートにも潤沢にあり、

表現をするのはとても難しいです。ここでは、表現を言い当てることが目的ではなく、チョコレートによってニュアンスが違う

ということをお分かりいただくだけで十分です。口に含んだ後に良質なチョコレートは、香りが変わってきます。口に含んだ瞬間、

舌の上で溶ける瞬間、溶けながら広がる香り、あるいは後から続いてくる香り、食べた後の口の中に残る香り、全て違います。

香りの移ろいもぜひ感じて見てください。

5.味わってチョコレートを楽しむ

カカオも奥深く、品種によって味が変わってきます。基本的にカカオはそのまま食べるとにがすぎて食べられませんが、

同じ苦味でも、穏やかな苦味、力強い苦味などがあり、カカオの焙煎方法によっても味の出方が変わるので、多様なチョコの味に

かわります。これに甘味や含有されている原料が何かによっても味が変わりますので、食べ方や食べるシチュエーションによって、

「チョコレートの食べ分け」ができるようになると、とても面白いと思います。ぜひ試してみてください。